2007年07月11日

添い寝

珍しくヴォルフラムがビーレフェルトへ帰っていたので、
今夜のベッドはかなり広かった。
いや、この広さが本来魔王である自分に与えられた特権なのだろう。
しかし思った以上にシーツの余白が目立つ自分のベッドを前にして、
俺は部屋の明かりを消している名付け親を呼び止めた。

「なあ、今夜はあんたがここで寝てよ」
「折角ヴォルフラムが居ないんですから、たまには正しいベッドの広さを満喫して下さい」

やんわりと断られて有利は微かに胸が痛むのを感じた。

「俺と一緒に寝るのはダメなんだ…」

思わず口をついて出た言葉にはっとして彼を見ると、
少し悲しそうなそれでいて困ったような表情と目がかちあう。

ああ、彼を困らせる程度には自分はそこまで好かれていないのだと感じとって、
有利は大人しく上質なシーツの上に横たわった。

「ごめん、俺の我が儘だったな。もう寝るから…ありがとう」

彼の顔を見るのが怖くて、涙が滲みそうになる目をキツく閉じて背を向ける。

恐らく自分を見ているだろう名付け親が、小さく「困ったな…」と呟くのが聞こえた。
完全に追い撃ちだ。
一人よがりの気持ちがいかに情けないかを知ってしまった今、
もう一刻も早く意識を睡魔にさらって欲しかった。
そもそも、いつもあれだけ一人で寝ることを切望していた自分が
今夜に限ってコンラッドをそばに置きたいと思ったのか。
自分のことなのに、ここに至った心情が出来ずに有利は必死に羊を数えたのだった。


朝、いつもより静かな空気に違和感を感じて有利が目を覚ますと
目の前には名付け親の端正な顔があった。

「う、わっ」

思わず飛び起きようとすると、それよりも早く筋ばった大きな手が
肩をやんわりと押さえ付けた。

「おはようございます、ユーリ」

相変わらずの極上の笑みで見つめられて有利はパニックになった。
何故自分の隣で名付け親が寝ているのか。
昨晩断られて情けなくも涙しかけたのは夢だったのか。
口をぱくぱくさせているとウェラー卿は少しだけ困ったように
「すみません」と小さく謝った。

「昨日はあのままご一緒したいところだったんですが、
片付けなければならない職務があったのとまだ風呂にも入っていませんでしたからね。
全部片付けてから勝手にお邪魔してしまったんですが…ご迷惑でしたか」
「いや、迷惑じゃなくてむしろ俺がお願いしたんだし…って、
ちゃんと言ってくれればあんたが来るまで待ってたのに!」
「あなたの貴重な睡眠時間を俺なんかのために削ってしまうには忍びなかったので」

しれっと述べるコンラッドに有利は呆れた。
あまりにも彼らしい回答だったから。

「じゃああんたの睡眠時間は削ってもいいのかよ」

膨れっ面で言うと、彼はまた困った顔を見せた。
彼がここまで困り顔を見せるのも珍しいな、と有利は思った。

「有利の寝顔を見ていたら、睡眠以上の休養になりましたから」
「まさか、寝てないってことは…」

ないよな?と見上げると、ニッコリ笑ってはぐらかされた。

とりあえず、一緒に寝てくれる程度には好いていて貰えたのだと
安心して有利は布団に潜り直すと

「3番目覚まし鳥が鳴くまで寝坊して」

と、コンラッドの袖をひいて目を閉じたのだった。

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posted by 浬 at 21:40| 🌁| Comment(41) | TrackBack(2) | まるマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月10日

「あ」は「諦め」の「あ」

敵わない。
どう考えたって、あの人には敵わない。
何もかも自分より高みを目指しているあの人には。
そして、俺がどうされれば1番喜ぶのかも悲しむのかも。
全て分かっているあの人に、敵う訳がないじゃないか。

「はあ」

ため息を吐けば、むなしく流れる重い空気。
自分のため息なんて聞けば聞くほど落ち込むもの。

「どうしたハボック。いつになくむさ苦しい顔をして」
「余計なお世話っスよ。どうせあんたみたいなすまし顔なんて出来やしませんから」

たまらず胸ポケットから煙草を取り出して銜える。
何度この相棒に助けられたことか。
自分のような若造には、コイツに頼らないとやってられない事ばかりだ。

「・・・お前は元気だけが取り柄なのだから、早く立ち直れよ」

大佐にポンっと肩を叩かれて、思いがけず気分が上昇する自分に腹が立つ。

甘やかされてんだよなあ、と呟いた俺の声は立ち去る大佐の背に当たって虚しく弾けた。
そう、いつだって大佐には敵わないのだから。
posted by 浬 at 01:56| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月16日

雨下知る五月。

「明智さんてさぁ、雨の日は髪の毛跳ねたりしねぇの?」
「そういう君はどうなんですか金田一君。その鬱陶しくも長い髪の毛だと
 ケアも大変でしょう」
「あんたの無意味にキラキラな髪の毛よりはマシだと思うぜ」
「私は癖毛ではありませんから、天候には左右されません」
「へー。でも、朝は跳ねてるよな(にんまり)」
「・・・そういう可愛くないことを言う人にはこうです(一の髪を引っ張る)」
「イテテテテテテっ。明智横暴!警察官が善良な市民に手を出していいのかよ」
「善良な市民の皆さんに謝罪した方が良いですよ君の場合は」
「あんたも人のこと言えない癖に(ボソッ)」
posted by 浬 at 01:45| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 金田一 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月09日

ごくー。

「おいカカロット、今日は貴様が生まれた日だそうだな」
「・・・?オラ自分が生まれた日なんて知んねぇって」
「何?ブルマが言っててたのだから間違いないだろう!」
「いやホントにしらねぇって。よく考えてみろよ。オラ自分が
 サイヤ人だったことさえ知らなかったんだから生まれた日なんて
 もっと分かんねぇって」
「くっそう、ブルマのヤツ・・・!」



「ほーんと、べジータって単純よね〜。『5月9日だから悟空―孫くんの誕生日かもねー』って冗談で言ったら間に受けちゃって!
ベジータがそっちまで行ってたら適当にあしらっておいてねチチさん」
posted by 浬 at 00:29| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | DB | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月08日

ゴーヤ

「へい、さくら君。今日は君の誕生日じゃなかったかい?」
「そだよ。よく覚えてたねえあんた。もしかして、何かくれるの?」
「まあ、大したものじゃないけどねぇ。ちょうどフランスすら帰ってきた
ママが絵葉書を沢山お土産にくれたのさ。君は絵が好きだろう?」
「へぇ〜おフランスの絵葉書ってどんなの?本当に貰っていいの?
 後で返してって言われても返しゃしないからねっ」
「・・・そんなこと言わないから安心してくれたまえよ」
posted by 浬 at 00:22| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | まる子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月07日

こーなん

「コナンくん、今日の晩御飯は何がいい?」
「・・・?蘭姉ちゃんの作ってくれるみのなら何でもイイよ」
「あら〜、嬉しいこと言ってくれるのねぇ。でも今日はコナンくんの誕生日でしょ?」
「え?僕の誕生日は4日だけど」
「今日は5月7日だから、てっきりそうだと思ってたのに」
「・・・ちょっと寒いよソレ」
posted by 浬 at 00:00| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | コナン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月06日

ゴムの日。

「そういや、うちの船長の誕生日は今日だったか?」
「あぁ?昨日の晩に俺が腕を奮ってバースデーディナーを演出したのを
 忘れたのかこのグリーンマン」
「ああ、いつもに比べて豪勢だった…か?」
「俺に聞くな。方向音痴だけでなく日付の感覚も音痴になってるようだな」
「今日は5月6日だろ」
「はい、よく出来ました〜」
「じゃあやっぱアイツの誕生日じゃねえか」
「はぁ?今までの話聞いてたのかテメエ」
「…ゴムの日」
posted by 浬 at 21:53| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | ワンピ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月05日

こいのぼり。

「屋根よーりたーかーいっこいのーぼーりぃ〜♪」
「随分とご機嫌だね渋谷」
「そういえばさ、最近の鯉のぼりって沢山ついてるけどアレはお父さん、お母さん、子供、孫、曾孫、玄孫…って続く訳?」
「でも君がさっき歌っていた童謡によれば、『大きい真鯉はお父さん、小さい緋鯉は子供たち』ってことになるから
黒いのが父親で後は子供…大家族だねえ」
「えっ、じゃあお母さんは居ない訳?実は父子家庭?」
「ああやって空を雄大に泳いでいるようでも実際のところは複雑で、
みんな母親が違ったりして父親に引き取られたけれど愛情に飢えてたりする訳だよ」
「『面白そうに泳いでる』ってのも失礼になるかなあ。だってエンジョイなのかインタレスティングなのか聞くに聞けない状況だし」
「…渋谷、鯉に国際化を求めても難しいと思うよ」

posted by 浬 at 19:55| 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | まるマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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